Moku O Ka Rose





 Haleakala*はりっぱにそびえ、
 高く雲をいただく美しい山。
 (まさしく)Pi'ilani王の高貴さにもふさわしく。

 晴れやかなメロディとのびやかな歌声でもって、あふれる思いが過剰なまでに迫ってくるような、そんな印象がある『Moku O Ka Rose』。「Moku o ka rose」(バラの島)といえば、「loke lani」(小ぶりの濃いピンクのバラ)が島の花とされるMaui島のこと。そして、このmeleでは、まず島の最高峰Haleakala*が天を突き抜けるように高くそびえる様子や(i ka lani kua ka'a)、古代に島を治めたことで名高いPi'ilaniに思いをはせたりしながら、島の歴史や自然のすばらしさが、ひとつひとつ数え上げるように語られていきます。

 Lahainaよ、その場所には思慕に近いものを感じてしまう。
 その昔、このHawai'iの中心だったんだなぁと。
 (それは)聖なる雨の降る土地。

 Lahainaは、Maui島の西側、ちょうどLa*na'i島と向き合うあたりにある海沿いのまち。「昔の首都」(ke kapitala mua)と歌われるように、Kamehameha三世が1830年代末にその地を去るまで、ハワイ王朝の中心だったところです。1840年代以降、憲法の制定、土地の個人所有、議会制度の発足、選挙による議員選出……と、欧米人(haole)主導ながら、法による統治をめざす近代国家への歩みをはじめたHawai'i。そして、そんなHonoluluに首都機能が移されてからの社会体制とはまったく異質なものをその正当性の根拠としたのが、Lahainaに王が暮らした時代の王朝のありかたでした。それは、王の神聖さをその絶対権力の拠り所とするもので、具体的には、王の血筋がはてしなく神話の時代にまでさかのぼること、つまり、神がそのルーツであるという物語がなにより重要とされました。そして、その神的存在が最初に住みついたとされるのが、Lahainaにあった「Moku'ula」*。文字通りの意味は「赤い島」で、実際に赤土の土地だったようですが、「’ula」(赤)といえば王族の神聖さを象徴することばでもあります。このmeleにもあるように「'a*ina o ka ua 'Ula」(文字通りに訳すと「赤い雨の土地」)と語られるLahainaは、そんな歴史的背景があるまちなんですね。それで、Lahainaといえば、もうそれだけでいろんな思いがわきあがってくるんだと('ailana ka mana'o)……具体的には語られませんが、キリスト教をはじめ、欧米の価値観が入り込むまでのHawai'iに思いをはせる、そんな気分で歌われているのではないかと思ったりします。

 私はその美しさを目にしたんだ。
 そう、Waiakoaが高くそびえる姿を。
 Ki*heiのすばらしさとともに……。

 「その美しさをみた」('ike maka au i ka beauty)と歌われるWaiakoa(853メートル、文字通りの意味は「兵士が使う水」)は、Maui島がひょうたんのようにくびれたあたりの南側、Pu'uokaliにある渓谷。一方、後半に登場するKi*heiは、Waiakoaを西に下ったふもとあたりに広がる海沿いのまちで、先のLahainaからだと、南東方向に海岸線をたどったMa*'alaea湾沿いにあります。東にはWaiakoaが美しくそびえ、それに寄り添うように海辺の風景が広がるKi*heiのまち。大小二つの島がくっついたようなMaui島のジョイント部分にあることから、Waiakoaを背にすると、島の東西を同時に見渡せるのではないかと想像されます。

 Makenaでは海が穏やかで、
 Ulupalakuaではその名高さを思う……。
 そこはカウボーイたちが暮らすところ。

 まさしく誇り高きあなた、Kipahuluよ。
 私のまなざしはうっとりとKaupoをたどり、
 Huialohaの教会を目で追うのです。

 Ki*hei からさらに海沿いをたどった南の端にあるのが、海が穏やかなことで知られる(makena ho'i ke kai)Makena。高くそびえるHaleakala*に雨雲がさえぎられる西側にあるMakenaは、雨が少なく晴れる日が多い地域にあり、Mauiでも人気のあるビーチのようです。そして、Makenaの山側を東に向かったところにあるのが、牧場で有名なまちUlupalakua……とたどっていくと、なんとなくLahainaを起点に東向きに島めぐりをしている感じがありますね。さらに、その次のバースで歌われるKaupoのまちは、Ulupalakuaから東方向に58キロメートルほど山側の道をたどった海沿いにあります。Haleakala*の山頂方向から南東に続くKipahuluを見上げる位置にあるそのまちを、「私のまなざしは(Kaupoを)うっとりと見る」(onaona ku'u maka)なんて、きっとそこにいるだけで幸せを感じてしまうような風景がひろがっているに違いありません。Kaupoといえば、創立1859年というHuialohaの教会(ka hale pule)でも知られていて、文字通りの意味「気持ちが集まる」(hui-aloha)からすると、地域のひとびとの信仰のよりどころであるような、そんな場所だったりするのだろうかと想像してみたり……。

 Hanaよ、なんて穏やかなところ。
 Pu'u'ikiからNahikuまで、
 それはホントに美しいところ。

 Hanaは、先に歌われたKipahuluの北側、Maui島が最も東に張り出している地域にあります。19世紀なかばにサトウキビ栽培がはじまり、最盛期の19世紀末には6つのプランーションが経営されていたといいますが、1946年に最後の農園が閉鎖されると、多くの労働者は島の西側へ移住。現在、まちの経済はおもに観光で成り立っているようです。島の東の端にあり、地理的に人の往来が制限されていることもあって、Hanaには古き良き時代を思わせる開発が進む前のハワイ文化や、南国のパラダイス的な自然が今も残っており、そのことも観光客にとっては魅力だったりするようです。雨が多い地域でもあり、滝がある絶景など山側の緑豊かな景色もすばらしいようですが、歌では「(南の)Pu'u'ikiから(北の)Nahikuまで」(mai Pu'u'iki a hiki i Nahiku)と、その海岸線が「ホントウに美しいところ」(he nani mai ho'i kau)としてたどられています。

 この旅の思いをこころに響かせて。
 バラの島と呼ばれる島をたどった気分で。
 なんてったって、Mauiは最高だよね。

 この歌は、Kuana Toress Kaheleによるものですが、彼のhulaの師であるJohnny Lum Hoの歌にインスパイアされて作られたものなんだといいます。そこには、Johnny Lum Ho率いるフラ教室、Ha*lau Ka Ua Kani Lehuaとともに成長し、ミュージシャンとしてMerrie Monarchの舞台を経験した、Kuanaさん自身の思いなんかも込められているようです。ウキウキしながらMaui島を旅しながら、テンションが最高潮に達しているようなこの曲の勢いは、もしかすると、晴れ舞台ならではの高揚感だったりするのかも……Maui の自然を体験したことのない私ですが、Merrie Monarch会場の異様な盛り上がりを思い起こしながら、「なんてったってMauiは最高さ」(Maui no* e ka 'oi)と言いたくなる気分をあれこれ想像させられた、『Moku O Ka Rose』なのでした。

*:Moku’ulaは池に小島が浮かんでいるような場所で、王がプライベートな時間を過ごす場所や、王族の墓があったりしたところ。王族のはじまりを記す神話の舞台として、それはいわば王の神聖さのよりどころであり、Hawai’iのひとびとの信仰の中心でもあったわけですが、首都が移されると、その神聖さを語り継ぐ人もいなくなり、1914年には土地開発の過程で埋められ、近年までその痕跡さえたどれなくなっていたようです。その発掘がはじまったのは1993年のこと。なお、Moku’ulaについては、以下の『ハワイ語のはなし』にもまとめています。
「ハワイ語のはなし119」http://archives.mag2.com/0001252276/20160101123649000.html
「ハワイ語のはなし127」http://archives.mag2.com/0001252276/20160512203000000.html

参考文献
1)Klieger PC: Moku’ula, Maui’s sacred island. Honolulu, Bishop Museum
Press, 1998, pp7-8
2)Osorio JK: Dismembering lahui-a history of the Hawaiian nation to 1887.
Honolulu, University of Hawaii Press, 2002
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