Lei Pua Kenikeni











 いとおしい、kenikeniのleiのことを、
 ずっと思いながら、僕は(その香りに)うっとりしてる。

 高らかにひびく晴れやかなメロディラインが、大好きな花のleiを手にしたときの高揚感や、なんともいえない幸福感そのもののように思われる『Lei Pua Kenikeni』。その香りを楽しみ(hia'ai)、こころにからみつかせながら(ho'ohihi)、気分はすっかり夢心地……そんな幸せの絶頂的なものを感じるこのmele。お気に入りのleiの香りに包まれる幸運にたとえられていることが、じんわり伝わってくる熱をおびた歌詞が連なっていきます。

 僕はその花の香りが好きでたまらないのです。
 さぁ、二人でささやくように愛を交わそうよ。
 
 「さぁ、愛のことばを交わそう」(e welina ka*ua)……ということは、どうも作者は、愛する誰かに語りかける気分で、その花の香りとともにある幸せにひたっているようです。おそらく、ささやくような愛のことばが、どこからか聞こえてくるのを期待しながら(I ka ne* mai)……。

 僕たち二人で、その花のすばらしさに包まれてるみたいだね。
 うっとりする香りが、愛するしぐさを見せてくれてるっていうか……。
 
 僕らなんかいい感じじゃない(ka*ua i ka nani)……先のバースまでは、ひとりで花の香りを楽しんで妄想しているような雰囲気がありましたが、ここでは一転、その花(ia pua)の香りが充満する素敵な空間のなかに、二人して(ka*ua)包まれてしまったようです。しかもそこには、愛の行為があったりとか(i ka hana ho’oipo)……そして、そんな状況をいっそう盛り上げてくれるのが、うっとりする花の香り(a ke onaona)だったりするわけですね。

 素敵なleiが、際立つ美しさのleiが香る、
 愛の交換、高揚感、あふれる魅力で……。
 
 ずっと思い、求め続けたあなたと、僕はいよいよ結ばれる……このバースには、まるでことばがなだれ込むように連なる独特の強度があって、なにより最高の幸せを手に入れただれかの思いが直接的に伝わってくるような印象があります。この直前のバースを受けて歌われる「onaona~」のフレーズも、思いつく限りの賛辞が並べられる「ho’oipo~」の部分にも、こころここにあらずみたいな雰囲気が感じられるからだと思われます。夢とうつつが混然一体となって、われを忘れるほどのエネルギーで対象にのめり込んでいる……そんな感じもあります。強いkenikeniの花の香りには、ひとの思いをあちらの世界へ連れていってしまう、そんな魔力がひそんでいるのかもしれません

 ふんわりやってくる大好きな香りを心にいだくと、
 かけがえのない存在(であるあなた)がまぶたに浮かぶよう……。

 目を閉じて、まぶたに浮かぶあなたの面影を感じながら(i ka 'ike a ka maka)、花の香りをこころに抱きしめる(i ka poli)……こんなふうに、花の香りとそれを楽しむひとのこころ模様が、ここでも細かく描写されています。強烈なリアルさでもって迫ってくる、kenikeniの香りやその花の輪郭と、そこから広がる夢の世界のうつろさ。そして、その対比のなかで結ばれる対象が、ここでは「lani keha」と呼ばれています。あなたでなければというかけがえのなさ(keha)と、手をふれるのもためらわれるほどの高貴さ(lani)。作者が対象に向けるあこがれの眼差しが、この一語に焼き込まれているといえるかもしれません。

 さぁ、歌の大事なところをうたうよ。
 Kenikeniの花のlei(に寄せたこの歌)に、僕の思いを託しながら……。

 作者のJohn K. Almeida(1897-1985)は、『Lei Pua Kenikeni』をはじめ、愛する女性に触発されて作った楽曲を多く残していることで知られるミュージシャン。作品が多いだけでなく、若い頃は次から次へと違う女性にこころひかれては恋いこがれ……みたいなタイプの男性だったという話もあるようです。だとすると、新しい楽曲が誕生するたびに、あぁ、また恋人ができたんだなぁ……みたいなことがすぐにバレてしまう、そんな状況もあったに違いないなんてことを想像しながら、「僕は~」と若い男性を思わせる訳語を使ってみました。もうひとつ、彼の個人的なことでいえば、これでもかという印象さえある香りへのこだわりが、盲目であった彼ならではの世界観というか感性に由来するであろうことを、書き添えておきたいと思います。

by John K. Almeida

参考文献
1)Kanahele GS: Hawaiian music & Musicians-an encyclopedic history. Honolulu, Mutual Publishing, 2012, pp14-17
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