Ki*pu* Kai





 Ki*pu* Kaiに寄せる思い(を歌おう)。
 海辺のほん近くにある家(のことを)。
 そこで私が目にするのは、
 温かく尽きることのないおもてなし。

 大好きな友人とその家のある美しい海辺の風景を、誰かに伝えたくて仕方ない……そんな思いがじんわり伝わってくる『Ki*pu* Kai』。Kaua'i島にあった牧場と、その所有者だったJack Waterhouseのことを語っているというこの歌。その場所には、尽きることのない温かいもてなし(ka nui lokomaika'i)があると歌われていて、よき友人関係や、その家のあるじのホスピタリティあふれる人柄もうかがえます。

 耳を傾けるていると、なんだかリラックスするんだ。
 波の音が響いてくるんだよね。
 そう、大きな波が寄せては返す(あの感じ……)。
 Kuahonuの岬にね。 

 波が寄せては返す音が響いてきて(i ka halulu mai o ke kai)、あぁ、いいなぁって感じで思わずくつろいでしまう(nanea)……Kaua'i島の南東側、Lihueと南端のPo'ipuのちょうど中間あたりにある入り江Ki*pu* Kaiには、波の音がささやくように聞こえてくる、おだやかで静かな空間がひろがっているようです。そんな「Ki*pu*-kai」(海側のKi*pu*)の北側には、Ha*'upuの山を隔てて「Ki*pu*-uka」(陸側のKi*pu*)と呼ばれる、緑豊かな土地が広がっていって、現在も牛の放牧が行われているようです。
 一方、Ha*'upuの南側に位置するKi*pu*-kaiには、山側に比べて乾いた土地がひろがっていて、2マイル(約3000キロメートル)続く入り江の半分は、白い砂浜だったりするようです。また、かつてはfish pond(養魚場)があったり、海辺のPo*ha*-kua(岩の峰、岸壁)にペトログリフが刻まれていたりもして、古代からひとびとの生活がそこで営まれたであろう土地柄もうかがえます*。

 あぁ、いなぁ……っていう思いが消えないんだ。
 Ha*'upuの美しさといったらないんだもの。
 天に向かって高くそびえる山。
 (それを)賞賛の思いで眺めるんだ。
 
 思わずうっとり見上げてしまうような、天に向かってそびえる山(mauna ki'eki'e i luna)、Ha*'upu(2300フィート、700メートル)**。その峰を中心に海側と山側にひろがる、Ki*pu*ならではの風景が歌われているわけですが、そんなHa*'upuの姿をながめながら、地元のひとたちは空模様をうかがったりもしたようです。そう、Ha*'upuに雲がかかりだしたから、そろそろ雨になりそうだね、みたいな感じですね。なんとなく、自然のパノラマに包まれた、とびきり気持ちのいい空間がイメージされますが、そんなふうに「Ke-ao-lewa」(浮かぶ雲)をいただくHa*'upuをながめながら、ひとびとはその雲を「巨大な白い鳥」とか、ときには「豚の雲」***とも呼んだといいます。また、Ki*pu*の名は「(雨やミストが)とどまる」に由来するといい、とにかく雲がかかっていることが多いHa*'upuでもあるようです。

 なにより楽しみだったりすること(といえば)、
 きれいなクジャクを(そこで)みることかな。
 なんだかうやうやしく群になって歩いてるんだ。
 Kiaweの木の葉陰でね。

 私の思いをもう一度心に響かせて。
 Ha*'upuの美しさに寄せる思いを。
 Jackの温かい気持ちとともにあるあの場所、
 Ki*pu* Kaiの家で迎えてくれる彼への思いを。 

 Ki*pu* Kaiには、Ha*'upuから海に向かう二つの尾根によって、陸側からのアクセスがさえぎられているという地形的な特徴があります。そのため、海に面したくさび型の土地は、プライベートビーチさながらに閉じられた空間になっていて、カヤックなどで海からアクセスするなど、軽い冒険気分で自然を楽しみたいひとにはうってつけの観光スポットのようです。また、その隔離された神秘的な感じも魅力のようで、そのあたりは、もしかするとこの歌が作られた1950年代の、特別感満載のKi*pu* Kaiに通じるものがあったりするのかもしれません。そうして、入り江を見下ろすHa*'upuの存在感を想像しながら、ひとの往来は変わっても、美しい風景にいだかれる幸福は変わらないのかもしれない……なんてことを思ったりもした、『Ki*pu* Kai』なのでした。

by Mary Pukui , Music by Maddy K. Lam

*:Ki*pu*-kaiの別名として、「pu*」(ホラ貝)を含む次のような地名が伝えられていて、ホラ貝がたくさんとれたこともうかがえます。「Ka-pu*-ali'i」(チーフのホラ貝)「Pu*-hoihoi」(楽しいホラ貝)「Pu*-hua」(子沢山のホラ貝)、「Pu*-hui」(ホラ貝の集まり)、「Pu*-aku」(カツオの色のホラ貝)。なお、「ペトログリフ」(ki'i po*haku)は、文字表記がはじまる以前にあった絵文字のような視覚表現。
**:「Ha*'upu」の意味は「集め直すこと」ですが、その由来は不明。
***:ハワイの神話で、豚の神「Kamapua'a」が、雲('o*pua、pua)としてのあらわれを持つと語られることにも対応しています。

参考文献
1)Wichman FB: Kaua'i-ancient place-names and their stories. Honolulu, University of Hawai'i Press, 1998, pp53-56

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