Ka Makani Ka*’ili Aloha







 ぼくはずっと思い続けてる。
 島ではよく知られたあの風に思いを託して。
 そう、ぼくが気にかけるあの場所に吹くという、
 愛を取り戻してくれる風(に思いをのせて)。

 ひろびろと海が見わたせる場所で、遠く水平線のかなたを見つめながら、なにごとかに思いを馳せている(e aloha a’e ana no* au)……そんな雰囲気がある『Ka Makani Ka*'ili Aloha』。その思いは、気がかりで仕方ない(a’u e ho’oheno nei)あの場所に吹く風によって運ばれるとされ、その風が、この誰かにとって、その場所に行けない自分の分身のようなものであることがうかがえます。しかもその風は、「alohaをつかみとる」(ka*’ili aloha)とも語られ、なにか特別な使命、あるいは願いのようなものが込められてもいるようです。

 Hui
 愛すべき花、あるいはleiのような、(もう)かわいくて仕方ない存在。
 (つまり)なにより大切に思っているんだけれど……。
 いとしいあなた、君はぼくの誇りだ。
 だから、ずっとぼくのそばにいてほしいひとなんだ。

 こんなふうに、「ku'u pua, ku'u lei, ku'u milimili」と「ku’u」(私の大切な)が何度も重ねられるあたりには、対象を思う気持ちの深さ以上に、なんとも切羽詰まった感じもあって、いとしいひとを思う誰かの、こころ穏やかでない心境もうかがえます。「かわいくてしかたないひと」(he milimili)で、「僕にとっての誇り」(he hiwahiwa na'u)でもあり、「ずっと身に着けていたいleiのよう」(he lei mau no ku'u kino)……そんなに愛されている「あなた」と、その思いを風に託すしかない「わたし」との関係は、最後のバースにいたって、もう少し具体的に語られることになります。

 その家(での暮らし)が大切だとしても……。
 そう、知らない誰かが手に入れたっていう、その楽しい家庭(のことさ)、
 ぼくはもう(そこに)行ったし、様子もわかってるんだよ。
 あの愛を取り戻す風(の力を借りて……)。

 「Ia home」(その家庭)は、知らない誰か(ka malihini)が手に入れたもの。たとえそこでの暮らしが「楽しい」(luakaha)ものなんだとしても、ぼくはそこに滞在したし(noho)、その様子だって知ってる(kupa)。そう、あの「愛を取り戻す風」(ka makani ka*'ili aloha)の力を借りて……。こんなふうに、いきなり登場したような印象のある「ia home」ですが、これは歌の冒頭でも歌われ、この誰かがずっと思い、念じていた場所のことだと思われます。そしてそこには、いとしい「あなた」だけでなく、見知らぬ第三者もかかわっていると……こころ穏やかでないのもなるほどって感じですが、そんな状況にあって、ほとんど神頼みの勢いで風に願いが託されたりする背景には、「愛を取り戻す風」(ka makani ka*'ili aloha)にまつわる、次のような物語があるようです。
 むかしむかし、Ki*pahulu(Maui島)に住むある男性が、あろうことか妻に去られてしまったときのこと。O'ahu島で新しい暮らしを始めた妻に、どうやって自分の思いを伝えようかと思い悩んだそのひとは、あるkahuna*に相談しました。男性の切実な思いを受けて、そのkahunaは、愛の祈りをipuにとじ込め海に流します**。そのipuがWaiki*ki*まで流れ着いたころ、魔法にかかったように気持ちをかき立てられた彼の妻は、その思いのままにli*poaの海草を採りに海辺に出かけていき、そこで流れ着いたipuを手に取ることになります。そうして、そこにとじ込められていた祈りによって、突然、「Maui島に帰ろう!」という思いがわきあがってきて、もとのパートナーのもとに戻った……という、そんなお話です。
 風に思いを託す……ロマンチックであると同時に、やや突飛な印象もあるこの発想。ですが、実際のところ「思い」には色も形もありませんし、「気」とか「気配」といったことばで表現されるものも、物理的ななにかというよりは、ものいわず迫ってくる存在感のようなものだったりすることもあります。ならば、強く力の限り念じることで、その思いが風にのり、あなたに届くことだってあるかもしれない……。そんな、ありやなしやの可能性にかけるしかないひとの、愛する喜びと切なさが充満している『Ka Makani Ka*'ili Aloha』。島をわたる風のように軽やかなメロディが、よりいっそう、その思いの重さを際立たせているように思われる一曲でした。

*:古代ハワイの聖職者的な存在。
**:ハワイの昔話には、このほかにも、ヒョウタンをくり抜いて作られる「ipu」に魔法の風を閉じ込めるという話があったりします(参考文献2)。

by Matthew H Ka*ne(1916)

参考文献
1)Wilcox C et al: He mele aloha-hawaiian songbook. Honolulu, Booklines Hawaii, 2008, p92
2)Nakuina MK et al: The wind gourd of La'amaomao-the Hawaiian story of Paka'a and Kuapaka'a. Honolulu, Kalamaku Press, 2005
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