Nani






 あなたの美しい姿を見ると、
 やわらかなミストにしっとりと包まれているよう。

 Ke 'ike aku au
 I kou nani
 E ho'opulu 'ia nei
 E ke kilihune ua

 大好きな誰かを前にして、その美しさにあらためて感じ入っているひとのやさしい眼差しや、満面の笑みが自ずと目に浮かぶ『Nani』。褒めたたえられているひとと作者との関係はここではわかりませんが、「やわらなかミストをまとっている」(e ho'opulu 'ia nei, e ke kilihune ua)と歌われる繊細な感じは、生まれたての赤ん坊のなめらかな感触、あるいはあふれる生命力を思わせるところがあり、天からの恵みに守られ祝福されたそのひとの、特別なオーラが表現されているのではないかと思われます。

 あなたの素敵な声に耳を傾けると、
 その愛にすっぽり包まれてしまう。

 Ke lohe aku au
 I kou leo nahenahe
 Pu*'ili iho au
 I kou aloha

 「あなたをみると」(ke 'ike aku au)ではじまった最初のバースの視覚的な描写に続いて、ここでは愛するひとの声について語られています。「Pu*'ili iho au」の「iho」に、「私自身がまるごと」というニュアンスがあることから「(声に)すっぽり包まれる」と訳してみましたが*、振動として伝わってくる声は、ときに見ることよりも直接的で、官能的にせまってくるものでもあります。その声が「あなたの愛情」(kou aloha)を伝えるものであるならなおさらで、全身全霊で相手を受け入れている感じがひしひしと伝わってくるようです。

 あなたは、なにより私にとって愛すべきひとで、
 (だから)気になって仕方がない。
 (あなたがいる)ここに中心があるみたい。
 私にとっての世界の中心が……。

 He aloha 'oe na'u
 E hi'ipoi nei
 I ne'i ka piko
 No ku'u kino

 「あなたは私にとって愛すべきひと」(he aloha 'oe na'u)……こんなふうに、あらためて「na'u」(私にとって)と強調される感じや、いつも相手を気遣っている(e hi'ipoi nei)というフレーズに、なかば相手と自分が一体化しているような、これ以上にない相手との親密な関係性がうかがわれます。私の存在にとっての(no ku'u kino)中心(ka piko)がここにある(i ne'i)のはそのためで、私にとっての世界の中心が、あなたのところにあることが宣言されているわけですね。

 まさに笛の音が、
 平原にひびきわたるよう。
 (そうしてあなたに)誘われて、
 私はいてもたってもいられなくなる。

 'O ke kani a ka pio
 Walo i ke kula
 E kono mai ana ia'u
 E naue aku

 「あっ、笛の音だわ」('o ke kani a ka pio)**と気づき、それが「平原にひびく」(walo i ke kula)と続く、なんともいえない晴れ晴れとした表現。これはおそらく、愛するひとからの誘いを受けて(e kono mai ana)、思わずときめいてしまったこころのゆらぎを描写するものではないかと思われます。「(こころ)動かされる」(e naue aku)というフレーズには、ややせき立てられるような感じもあって、前半のゆったりした雰囲気からはうかがえなかった、心引かれ合う二人の愛の営みを思わせるところもあります。

 思いを伝える大切なLeiのようなことばで、
 この歌の最後を締めくくろうと思う。
 やわらかなミストにしっとりと包まれている、
 そんな素敵なあなたを思いながら……。
 
 Ha'ina e ka wehi
 O ku'u lei
 E ho'opulu 'ia nei
 E ke kilihune ua

 大切なひとへの思いを、心を込めて編んだleiで飾るように(e ka wehi ku'u lei)語ったとされる『Nani』。心がおもむくままにつむがれたような素朴さが、じんわりとこころに響く一曲です。

by Alice Namakelua

*:下方向をあらわす方向詞「iho」には、英語の「-self」にあたる「再帰的」な意味合いがあります。
**:ハワイ語の構文のひとつに、「'o 」で強調したいことばを導くものがあります。
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