Halema'uma'u





https://www.youtube.com/watch?v=q88WUQscaQs


 Halema'uma'uの美しい姿をみると、
 (そこには)かの有名な女神Peleの燃え上がる炎がある。

 'Ike 'ia i ka nani a'o Halema'uma'u
 Me ke ahi kaulana a'o kawahine

 素朴で抑揚の少ないメロディラインが、なだらかな山並みを見わたすときの、なんともゆったりした気分を思わせる『Halema'uma'u』。Halema'uma'uは、Hawai'i島の南側に位置するKi*laueaカルデラ(1,247メートル)にあり、日々噴煙を上げ続けるクレーター。その自然現象を、ハワイのひとびとは「名高き火の女神Peleの炎」(ke ahi kaulana a'o kawahine)と呼び、古代から畏れ敬う対象としてきた……とことばにするのは簡単ですが、燃える大地とともにあることは、なにより危険と隣り合わせの日常を生きること。そのあたり、雄大な自然を目にしてしばし感動するだけの観光客とは、そもそもPeleとの向き合い方が違うわけですが、次のバースでは、そんな「malihini」(旅人)にとってのHalema'uma'uが歌われています。

 Peleよあなたは、旅人たちにとっても偉大なチーフ。
 このpa*hoehoeでできた大地の(主なのだから)。

 He ali'i nui 'oe na ka malihini
 O ne*ia 'a*ina pa*hoehoe

 「あなた(Pele)は偉大なチーフ」(he ali'i nui 'oe)。そして、このことは、たとえひとときそこに足を踏み入れた旅人(malihini)であっても、事情はかわらないと歌われているようにも読めます。そんなこといきなり言われてもって感じですが、後半には「ここはpa*hoehoeの大地(にほかならないのだから)」と訳せそうなフレーズが続いています*。「Pa*hoehoe」は、ある種の溶岩をあらわすことばで**、固まった表面がなめらかな、ゴツゴツしていないタイプのものを指します。粘性が低く、流れる速度が大きい場合に起こる現象で、流動性がきわめて高いハワイの溶岩流はおおむねこのタイプ。時速数キロ以上の早さで数十キロ流れることもあり、ときには海まで到達して陸地を広げていくものもあり、そうして陸地が形成されてきたのがHawai'i島の大地。だとすると、地元のひとだろうがビジターであろうが、そこに立っている限り、pa*hoehoeの大地であるPeleに従うほかないわけですね。

 旅人たちのまなざしも(壮大な光景に)感動している(のが見て取れる)。
 繊細な驟雨にしっとりぬれながら。

 Onaona na* maka o ka malihini
 I ka ho'opulu 'ia e ka ua noe

 Halema'uma'uがあるKi*laueaカルデラが位置するのは、西にKa'u*、東にPuna、北にHiloと接する、Hawai'i島でも比較的雨の多い地域。「驟雨にしっとりぬれながら」(i kaho'opulu 'ia e ka ua noe)と歌われるのは、噴煙と霧雨の双方におおわれる火口を目にするときの情景が歌われているのではないかと思われます。レインコートが欠かせない状況は、観光客にとって好ましいとはいえませんが、「なまなざしはうっとり感動するよう」(onaona na* maka)ですから、雨のHalema'uma'uもまた風情があってよし……といったところでしょうか。

 もう一度イメージしてみて。
 Halema'uma'uの美しい姿が迫ってくるその体験を。

 Ha'ina 'ia mai ana ka puana
 'Ike 'ia i ka nani a'o Halema'uma'u

 生きとし生けるものと同じように変化し続ける、物言わぬ大地。それは、われわれがそれによって支えられている限り逆らうことのできないものであり、意のままにすることはおろか、むしろ知の対象にならないなにものかのあらわれとして、全身全霊で受け止めるほかはない……。そんな紛れもない現実を突き付けてくるHalema'uma'uは、単に風景として眺めるような対象ではないと考えて、「その体験を」と訳してみました。地震、津波、火山の噴火、長引く大雨に台風等々、人間にとって不都合な現象は、とかく想定外として語られますが、人間もそういった自然の営みの一部分であること、そして、科学の知は本来的に後追いでしかないことを、われわれは今一度自覚する必要があるかもしれません。

by Maddy lam and Bill Ali'iloa Lincoln

*:「Ne*ia」は、「ke*ia」(この、これ)の同義語ですが、聖書の訳語として多用されたことばでもあることから、少しかたい印象の訳にしてみました。
**:なめらかな波紋の痕跡(縄状)を残して固まり、厚さも1メートル以下と比較的薄い「pahoehoe」に対して、表面がとげとげしくがさついた構造をしているのが「'a'a*」。粘性が高く、変形速度が遅い場合に生成する溶岩です。ただし、溶岩流には粘性が高くなると厚く短くなり流動しなくなるという性質があり、同じ溶岩流でも火口付近ではphoehoe、下流部では'a'a*などに変わる場合もあります。Hawai'i島でも、エリアによって「pahoehoe」「'a'a*」の双方がみられます。
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